逃げ墨は、建築の現場で使われる専門用語「墨出し」の仲間です。
あまり耳にしたことのない方もいるでしょう。
この記事では、逃げ墨がどういった墨出しなのかを解説します。
併せて、逃げ墨をするコツや墨出しそのものについて解説します。
逃げ墨や現場で描写するコツを知りたい方は、参考にしてください。
墨出しは、作業現場で寸法や基準線を描写する現場作業です。
今回紹介する逃げ墨は、現場での墨出し工程に含まれます。
本来墨出しは、基準線や寸法などを正確に描写しなくてはなりません。
しかし、逃げ墨は墨出しをしたい場所へ描写できない場合に、墨を描写する重要な作業です。
逃げ墨は、ほかにも寄り墨や返り墨とも呼ばれるので覚えておきましょう。
逃げ墨の場合は、描写できない本来の場所を基準として、以下のような条件で描写をしなくてはなりません。
・50~100cm離れた場所に描写する
・距離をわかりやすく描写する
一定の距離をあけて描写し、建物の寸法を正確に保つ役割があるので覚えておきましょう。
墨出しには、逃げ墨以外にも描写する墨には種類があります。
墨出しは、設計図面と照らし合わせて現場に描写する墨が異なります。
設計図面の情報を現場へ反映させる作業が墨出しです。
下書きした設計図を基に建設します。
今回紹介する墨出しは、以下の通りです。
1.陸墨(ろくずみ)
2.芯墨(しんずみ)
3.親墨(おやずみ)
4.子墨(こずみ)
それぞれの墨出しについて紹介します。
陸墨は、水墨とも呼ばれる墨出しで床の高さを示します。
床の高さを示すため、必然的に各階の水平を表す重要な印です。
陸墨があることで、電気設備の高さなどを調整する際に必要です。
電気設備のために印をつける場合は、メーター墨とも呼ばれます。
陸墨には、上がり墨と下がり墨といったものがあります。
具体的には陸墨から上に描写するか下に描写するかで異なるので覚えておきましょう。
芯墨は、柱・梁・壁の中心を示すために描写します。
骨格部分の中心部分に描写する墨です。
芯墨があることで、建物の品質や精度を高められる建設ができるため、とても重要です。
芯墨は、重要な墨であるため心墨や真墨と呼ばれる場合もあるので覚えておきましょう。
建築する際に使用する構造材を組み立てる場合、芯墨を中心に組み立てて設計します。
また、材木を加工しなくてはならない場合、芯墨を元に加工をするときにも役立ちます。
親墨は、設計図を基にして最初に描写する墨です。
陸墨と同様に一般的に扱われる墨で、床面の水平を表示する印が地墨です。
また、柱や壁に対して垂直を表示するのが立て墨と呼ばれます。
まっすぐに建設するためにも描写する際に、大切です。
建設するときに重要な墨で、壁の出っ張りや引っ込みを防止できます。
子墨は、親墨を描写したあとに型枠用で床に描写する墨です。
「小墨」と呼ばれることもあります。
親墨を基にして、柱や壁の大きさを表すために墨を描写します。
仕上げをするために必要で、こちらもどの墨出しと同様に重要です。
逃げ墨は、正確性と精度がとても重要です。
建設するうえで、図面を現場に描写する大切な墨だからです。
逃げ墨などの墨出し作業をするときは、次の点に注意しましょう。
1.わかりやすい線を引く
2.ミスの修正は早めに
これらの点について解説します。
逃げ墨は、墨出しの中でも正確に描写すべき墨です。
建物の基準ともなるため、描写を失敗すると建物のすべてがズレてしまう可能性があります。
安全な建物を建設するためにも重要です。
そのうえで、急な施工であってもわかりやすく正確に描写しましょう。
逃げ墨は、離れた距離に一定の感覚で描写する墨です。
現場のスタッフに情報をわかりやすく共有するためにも正確に描写するよう心がけてください。
もし、わかりにくい描写があった場合、現場の作業が滞ってしまいます。
逃げ墨は、ミスをしないように描写することが大切です。
しかしながら、誰にでもミスは起こるものです。
仮に、ミスをした場合にはすぐにミスを修正しましょう。
描写の線が二重になる場合は、正しい方に〇をつけるなどの工夫も大切です。
現場スタッフがわかるように描写することを心がけてください。
仮に、ミスをしたままで施工をするとミスが連続して起こる可能性があります。
ミスが起きた場合に、修正処理を早く正確にしましょう。
逃げ墨は、墨が打てない場所から離れた位置に定期的な間隔をあけて描写する墨です。
墨出し作業のなかでとても重要で、正確性や精度を高めなくてはなりません。
逃げ墨をする際には、現場スタッフに設計図の情報を伝えるためにもわかりやすく描写しましょう。
そのほか、墨出しをする際には用具の適切に使って墨出しをすることも大切です。
安全性の高い設計をするためにも、ていねいに正確な描写を心がけてください。