水準測量とは 水準測量の基本情報と誤差の解消法

水準測量とは、レベルと呼ばれる水準測量機器による測量をいいます。

2点間の高低差による標高測定を目的とする測量であり、建築土木工事には欠かせません。
高い精度が求められるため、使用する道具、使用方法には細心の注意が必要です。

ここでは、水準測量の定義から基本情報、使用する道具と誤差の解消法をわかりやすく解説しています。
記事を読むと、測量についての概要がつかめるでしょう。

水準測量とは2点の高低差による高さの計測

水準測量とは、2点間の高低差による高さの測定です。
レベルと呼ばれる測量機器を用いて計測されます。

道路や斜面の勾配を計測したり、建造物が計画通りに立てられるよう地盤の高低差を測定したりします。

土木構造物を計画通りに施工するためには、一定の基準に則った測量が必要です。
一定の基準とは、国土地理院の定める水準点や水準原点を指します。

基準をベースとした高い精度が求められるため、水準測量には技術・スキルが必要です。

水準測量の2つの種類とは

水準測量は直接水準測量と間接水準測量の2種類に分類されます。
以下、表をご参照ください。

測量の種類 測量機器 測量方法
直接水準測量 レベル・標尺 レベルと標尺を使って高低差を求める
間接水準測量 セオドライト(トランシット) 角度を測定し計算によって高低差を求める

直接水準測量は高さ計測を目的としますが、間接水準測量に用いるセオドライト(トランシット)は角度を測定するための測定機器です。
高さを求める場合には、角度から計算し直さなければなりません。

一般的な概念としては、水準測量とは直接水準測量を指します。

水準測量における水準原点とは

水準原点とは日本国内における土地の標高を計測・測定する際の基準点です。

東京湾の平均的な海面を0とし、標高24.3900mのところに設置されています。
水準点の場所は東京都千代田区永田町です。

この水準原点を基に、国道や県道沿いに1~2㎞毎に水準点が設置されています。
日本国内の土地の標高を測る場合、平均海面からの高さで表示しなければなりません。
したがって、水準測量では水準点・水準原点を基準に高さを測定します。

水準測量に必要な道具と正しい使い方とは

水準測量に必要とされる道具は以下の4つです。

・測量機器(レベル)
・標尺
・野帳
・温度計

メインとなる道具はレベルであり、標尺は定規のような役割をします。
野帳は記録用紙、温度計は極端な温度差を避けるために必要です。
それぞれについて解説します。

1.進化し続けるメインの道具|レベル

水準測量に用いられる測量機器はレベルと呼ばれています。
以下、代表的な4種類のレベルについて表にまとめました。

レベルの種類 特徴 メリット デメリット
オートレベル 水平状態を維持するための自動補正装置がある 精度が高い

水平維持が自動

1人作業不可
チルチングレベル オートレベルが登場する前、最も使われていた 精度が高い 水平維持が手動
デジタルレベル 機械が自動で測定し記帳するため測定誤差がない 測定とデータ記帳が自動

測定誤差がない

電源が必要
ハンドレベル 望遠鏡型の簡易測定機器

水平測定タイプと傾斜角を読み取るものがある

手軽に持ち運べる 精度は高くない

現在、水準測量に使用されているレベルのほとんどは、オートレベルです。

2.多いほど精度が高まる|標尺

水準測量に用いられる目盛りを記した巨大定規のようなものを標尺といいます。
レベルから覗き込む視準線の高さを示すための器具です。

通常、レベルを挟んだ2か所の測定地点に立てられ、その高低差によって高さを求めます。

細長い形状でありながら、断面は箱型になっているため「箱尺」とも呼ばれます。
長さは2mから7mまで多種多様、それぞれ釣り竿のような伸縮式です。

標尺目盛りのわずかな誤差は、土木建築にとって致命的な結果を招いてしまいます。
精度を高めるため、より多くの標尺を用意しておきましょう。

3.測ったら記すのが鉄則|野帳

野帳とは、測量結果を記帳するためのメモ帳、日記のようなものです。
レベルブックとも呼ばれます。

野帳の記入方法は「昇降式」と「器高式」の2つの方法です。
「昇降式」は中間点の少ない現場に使用し、「器高式」は中間点の多い場合に使われます。
実際には「器高式」による記帳がほとんどです。

記載事項は日時・天気・現場名・測定データです。
空いたスペースに概略図を描く場合もあります。
基本的に書き方は自由ですが、誰が見てもわかるように記入するのがポイントです。

4.より精度を高めるための必需品|温度計

計測データの精度を高めるためには、温度計は必須のアイテムです。

理由として、2点間の極端な気温差が標尺の目盛り計測に影響しかねないからです。
あまりに高温の場合、地表からの陽炎のようなゆらぎが視覚を妨げてしまいます。
日差しをさえぎるため、測量機器に日傘をさすケースも珍しくありません。

温度計は2級標準温度計か水銀温度計を使います。
較差が2℃以内かを確認しましょう。

水準測量の誤差を解消する方法とは

水準測量で起こりうる誤差の原因と解消法について、以下表にまとめました。

原因 解消法
標尺の目盛り誤差 2本1組で交互使用
陽炎による誤差
  • 下部測定を避ける
  • 距離を縮める
レベルへの直射日光による誤差
  • 日傘をさす
  • 覆う
  • 午前・午後に計測し平均をとる
観測誤差 以下の距離を目安に

  • 精密水準測量 最長50m
  • やや精密   最長60m
  • 普通精度   70~80m

レベルの測定精度は高まり、0.1mm単位まで検出できるようになりました。
それでも、さまざまな要因で誤差は生じます。
誤差の解消に上記表を活用してもらえると幸いです。

まとめ

水準測量とは、レベルと呼ばれる測量機器と標尺を用いた標高の測定です。
一般的には、自動で水平調整するオートレベルが使われます。

近年では野帳に自動記載するデジタルレベルなども登場し、測定精度も0.1mm単位まで高まっています。
今後も水準測量の技術は発展し、精度のさらなる高まりが期待されます。

まずは、基本を押さえて徐々に視野を広げていきましょう。