建築用語の「陸墨」この言葉をはじめて聞く方も多いのではないでしょうか。
建築プロセスにおいて不可欠な役目を果たす「墨出し」の中の一つですが、平ら面の目安を示す墨です。
このような陸墨を含む墨出しは、工事の着工から竣工までのさまざまな工程で行われています。
そこで今回は、陸墨の概要や墨出し全般についても解説しますので、建築の知識を深めて現場での仕事に役立ててください。
陸墨とは、墨出しの一種で各フロアの水平方向の高さ基準墨で「腰墨」「水墨」「レベル墨」といいます。
陸墨から上げて指す墨を上がり墨、下げて指す墨を下がり墨といいます。
一般的に使用されるのは、電気設備や高さの調節が必要なケースの目印です。
具体的には、床の仕上がりより1000mmのところに打つ「メーター墨」があります。
仕上げ面から1m上がったところに水平の墨を打って1mやFL+1,000などと書かれます。
このときのFLの意味は床面を表すフロアラインです。
ほかにもCL(コンクリートライン)やSL(スラブライン)で表され、その際はCL+1,000などと表記されます。
既述のとおり、フローリングなどの床仕上げ上面の位置を記す墨を陸墨といいます。
各フロアの水平のもととなり、床の基準です。
建築用語において「陸」の意味は水平で読み方は「ろく」です。
ほかにも「みず」とも呼ばれています。
ほかにも「ろく」とつく用語があります。
例えば屋上のような水平でフラットの屋根を「陸屋根(ろくやね)」。
勾配があまりない庇を「陸庇(ろくびさし)」。
水平でないケースを「不陸」(ふろく)などといいます。
墨出しは、鉄筋工事をはじめ型枠工事、建具工事、金物工事など多くの工事で設計図を原寸大で書いていく仕事です。
設計図は、綿密な計算をもとに作られた建築の心臓部です。
しかし、この小さい図面のままでは多くの人数が働く現場全体で明確なビジョンを共有するのは無理があります。
つまり墨出しは、この図面の情報を実際に現場の壁および床・柱などに反映させて現場の全員にビジョンを共有できる図面を作る仕事です。
この墨出しは、図面どおりの正確な精度が求められます。
最近ではレーザー照射器を当て、そのラインに沿って墨を引く手法も実施されています。
レーザーを利用すれば、建物の柱や壁、天井などの水平性を容易に確認可能です。
そもそも墨出しとは、データや紙ベースの図面を実寸サイズで建物自体にレーザーおよび墨つぼを使用し、施工に必要となる基準線を出していく工程です。
主に現場監督が実施するケースが多く、職人さんの作業効率や部材の寸法・特性を考慮し墨を出していきます。
基本中の基本の工程で、家具を置く位置、キッチンが設置される位置、照明や空調が設置される位置など墨出しのとおりに物作りが進むのが基本で重要な線です。
一方の陸墨は、既述のとおり、墨出し作業で各フロアの水平方向の高さ基準墨です。
ここからは、墨出しを表す陸墨以外の主な用語4つを紹介し解説します。
用語を把握しておけば、実際の仕事への理解も深まります。
芯墨は、木造建築でよく使われます。
立てたい柱や壁の中心を指す位置に墨出しし、実際の現場では「心墨」や「真墨」などとも示されます。
構造物の材料は、芯墨を中心に据え、一致させる組立てプロセスにおいて、高い組立て精度を保つためには不可欠な役割を果たす墨です。
例えば材料の木材は、真っ直ぐに見えますが、実は真っ直ぐではありません。
正確に組立てるには加工が必要なので実施します。
障害物などがあり墨出しできない場合に、墨出ししたい位置から一定距離(50cm、1mなど)離れた場所に打つ墨が逃げ墨です。
その距離も書いておきます。
「寄り墨」や「返り墨」ともいい、ヨリ1000や500返りなどと記されます。
マンションなどではコンクリートの躯体に沿って壁を起こすのですが、壁と床の間は、コンクリートが粗く打ってあるケースが多く、床に墨を出せません。
そのようなときに返り墨を用います。
柱や壁の位置を表すために最初に打つ墨を親墨といいます。
設計図に書かれている柱や壁の中心をとおる線を親墨としますが、芯墨や陸墨を親墨とするのが一般的です。
床面に水平に表示するのは「地墨」、柱や壁に垂直に表示するのを「立て墨」といいます。
現場では、建物を真っ直ぐに建てるために用いられます。
壁の突出や引っ込みを防ぐためです。
躯体工事や仕上げ工事で、親墨を打ったあとに打つ型枠用で「小墨」とも呼ばれています。
親墨をもとに、柱や壁の位置および大きさを表す墨をコンクリートの床面に打ちます。
陸墨を含む墨出しは建築や工事現場の基本中の基本です。
現場状況を確認し、優先的に墨出し箇所を確認しましょう。
終了後は図面と現場を照らし合わせ、図面通りの寸法かを慎重に確認してください。
現場での墨出しは、建物を真っ直ぐに建てたり、設備の高さを調整したりと、基準をはっきりするために重要な役割があります。
実際に現場に入る場合は、ぜひ今回の記事を参考にしてください。