階段墨だしは難易度が高い  専門用語や寸法の基準や測り方を解説

階段の取り付けや墨だしはさまざまな形状があるため難しいといわれる作業です。
建築基準法により住宅階段は一段の高さなどがあらかじめ決められています。

墨だしをするには角度や段の幅などを計算しなければなりません。
今回は階段でよく使用する専門用語をまとめました。
さらに廻り階段(プレカット階段)を例にして実際に墨だしする方法もまとめています。
計算方法や計算するのに役立つサイトやアプリも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

階段墨だしは難易度が高い  専門用語や寸法の基準や測り方を解説

階段の墨だしなどで使う専門用語

階段の各箇所には、さまざまな専門用語が用いられています。
よく使う用語を表にまとめましたので参考にしてください。

用語 意味
踏板 階段の昇降で足が乗る板全体で、段板とも呼ぶ
踏み面 踏板の中で足が乗る部分
段鼻 踏板の先端部分で、滑り止めを設置する場所
蹴込 段鼻から下段の蹴込板までの長さ
蹴上 一段の階段の高さで、建築基準法で23センチ以下にする必要あり
側桁 階段の両側に斜めに通わせた板

階段の寸法を計算する際にもよく使うので覚えておきましょう。

階段の墨だし前に寸法基準を確認

階段の寸法は建築基準法で最低基準が設けられています。
それは、使用する建物の用途や面積により設定内容は異なります。
規定外のものを作ると、既存不適合建築物になる可能性もあるので注意しなければなりません。

住宅に設置する階段と屋外に設置する直通階段を例に、寸法の基準を紹介します。

・住宅階段の寸法:踏板の幅75cm以上、蹴上23cm以下、踏面15cm以上
・屋外階段(直通階段):踏板の幅は90cm以上、その他のものにあっては60cm以上

踏板と蹴上、踏面と細かく条件が決められています。

階段の種類により変わる墨だしの手順

建物により設置する階段の形状は異なるでしょう。
そのため、階段はいくつかの種類に分類されています。
階段の種類でよく使用するものを紹介しますので、参考にしてください。

名称 特徴
直階段 曲がりがなく真っ直ぐに昇降できる
かね折れ階段 途中でL字に曲がっている
廻り階段 途中で90度~180度に折れ曲がる
らせん階段 らせん状になっており回りながら昇降する

今回紹介しているのは代表的なものを紹介しました。
続いて階段の墨だしを行う手順について紹介します。

1.原寸を書く

階段の墨だしを描く前に養生ボードに原寸を書きましょう。
養生ボードに記入すると、階段の取り付け後も階段養生として使えるので便利です。
原寸を描く手順は次の3つです。

・芯墨を描く
・柱105角
・30度の芯墨を引く

まず中心線となる芯墨を描きましょう。
階段の芯の長さから角は105mmが多いので引き算して、全体の長さを計算します。
続いて30度の芯墨を引く作業に移ります。

2.切り墨・切り欠き墨を書く

階段の踏板と柱を加工するのに必要な原寸の線を探しましょう。
その後切り墨や切り欠き墨を描く手順は次の通りです。

1.段鼻に印をつける
2.段坂を線上に置く
3.段鼻のラインを蹴込ラインに合わせる
4.柱の切り欠き線を原寸にとる
5.段坂の切り墨をとる

これらの作業をくりかえして、廻り踏坂の切り墨と柱の切り欠き墨をとります。

3.階段板をカットして取り付ける

続いて、階段に設置する板をカットします。
板は、作成した原寸をもとにカットしましょう。
一度部材を切ってしまうと取返しがつかないため、カットする前にもう一度原寸に乗せて、墨のチェックをしましょう。
部材を切り完成したら階段に取り付けて完了です。

階段仕上げ墨だしの計算方法

階段の墨だしで必要な計算方法および手順を紹介します。

1.階段の全長を確認:例えば全長が3000mmとする
2.階段の段数を決定:今回は仮に10段とする
3.段の高さは全長を段数で割ったもの
4.一段あたりの高さは300mm
5.次に一段あたりの幅(踏み面)踏み面は250mm

これらの値から階段の斜度(傾き)を計算します。
斜度は一段あたりの高さと幅から計算しましょう。
この例では、斜度は約50度で、一段あたりの高さが300mm、幅が250mmです。

最後に、これらの値を用いて階段の墨だしを実施します。
墨だしは、階段の各部分が正確に位置する場所を示すために活用しています。

階段墨だしなど大工が使用する計算式

墨だしで大工の方がよく使う計算式を紹介します。

・階段の長さ:建築基準法では蹴上230mm以下、踏面150mm以上
・階高=1階の床仕上げ~2階床仕上げまでの寸法
・階高3,000mmの場合は、3,000mm÷230mm=13.0434782608なので13段
・踏面寸法×階段=総長

建築基準法の最低基準の寸法は150mm×(13段だとするとマイナス一段で12段)=1,800mmが階段の総長です。

階段の墨だしにも使える計算アプリ

階段の墨だしには、総長や角度などさまざまな計算が必要です。
ここから階段の墨だしにも役立つ計算アプリを紹介します。

アプリ/ソフト名 使用可能なデバイス
Android Stairs-X Lite – Calculator Android端末
Apple RedX Stairs – 階段計算ツール Apple端末
生活や実務に役立つ計算サイト Webページなのでインターネットに接続しているデバイスすべて

数式をもとに自力で計算するのも一つですが、計算アプリを活用するのが便利です。

まとめ

階段の墨だしでよく使用する専門用語や寸法の基準を解説しました。
実際に一般の住宅でよく設置される廻り階段(プレカット階段)を例として、墨だしの方法も紹介しました。

階段の墨だしは原寸を作成するにもさまざまな計算が必要であり難しいといわれています。
新築で住宅を建てる際は、階段設計の実績豊富な業者に依頼するのが安心です。
弊社では、階段墨だしも対応しているので、ぜひ気軽にご相談ください。