建築の現場でとても重要な役割を担っている墨出し。
この墨出しを行うためにはどのような用具が必要なのでしょうか。
今回の記事では、墨出しにはどんな用具が必要か、また紹介した用具の具体的な使い方について詳しく解説を行っていきます。
墨出しで用いる用具に興味のある方、墨出しを行う予定のある方はぜひ参考にしてくださいね。
「墨出し」の仕事についてご存じでしょうか。
日常生活ではあまり耳にしない言葉なので、ご存じない方も多いでしょう。
しかし、建築の現場において墨出しは非常に責任重大で、「墨出しがなければ建築を行うのは不可能」とまで言われています。
そこでここから、墨出しとはどんな仕事なのか、どんな道具を用いて行う仕事なのかについて解説を行っていきます。
墨出しとは、柱の位置や壁の大きさなど、さまざまな図面の情報を実際の現場に記し、建築現場の指針にできる「実寸大の設計図」を作成する仕事を指します。
図面は建物を作っていくうえでの設計図としてとても大切な役割を持っています。
しかし、元のサイズの図面のままでは、たくさんの人数が動いている建築現場で明確に設計を伝えるのは現実的ではありません。
そこで墨出しの出番です。図面の情報を建築現場の柱や壁、床に精密に表示させ、現場に効率よく設計図を伝えられるようになります。
墨出しを精密にミスなく行うには、多くの道具をきちんと使いこなすことが求められます。
ではここから、墨出しはどのような道具を用いて進められるのかを見てみましょう。
名称 | 用途 |
墨壺 | 墨出しのためのメインアイテム。
墨壺には墨を吸わせたワタを入れる。このワタに糸を通して黒く染め、糸を用いて図面通りの線を引いていく。 |
チョークライン | 墨壺と基本的な用途は同じ。
違う部分としては、線を引くのに用いるのが墨ではなくチョークであるところ。 墨とは異なり、簡単に書き直しができるのがメリット。 |
墨出し器 | 水平な場所からレーザーを照射し、基準線を示せる装置。
屋内での墨出しでは大活躍。 |
トータルステーション | 角度を測定できるセオドライトと距離を測定できる光波の両者の特徴を持ち、2点間の距離や角度を精密に測定できる。 |
スケール | 日常生活で使用する場合もあるポータブルな巻き尺。 100円ショップなどでも手に入れられる。 |
差金(さしがね) | 2つのものさしをL字に交差させたような器具。
単純に長さを測るだけでなく、直角の確認にも使用可能。 |
下げ振り器 | 糸の先端に重りがついており、柱が垂直かどうか確認ができる。 |
上記のような多彩な道具を使いこなすと、精密な墨出しは可能になっています。
逆に言えば、これだけの道具を使わなければならないために、墨出しがいかに責任重大かもわかりますね。
墨出しに用いられる用具は、使い方や選び方が非常に重要です。
適切な道具を用いられなければ、墨出しにかける労力や手間もその分増えてしまいます。
そこでここからは、墨出しでよく用いられる用具の使い方・選び方を解説します。
墨壺は、1本の糸に墨を付着させ弾き、精密な直線を描ける道具です。
材料の両端から糸をピンと張り、糸を弾くと墨で線を引くことが可能です。
墨を使用している分、克明に線を引け、カンナなどで削る際に目印にしやすいのがメリットでしょう。
墨壺には従来型や最新の型があります。
従来型の欠点としては壺の内部が乾きやすい点が挙げられ、最新の型ではこの点に改良が加えられています。
最新の型は小型化されて持ち運びしやすい点も特徴的で、携帯しやすいものを使いたい方にはこちらの方が適しているでしょう。
チョークラインとは、先述のように墨壷と同様の用途で使用します。
墨ではなくチョークで線を出せるため、墨と比較してやり直しが聞きやすい点が特徴です。後から数回書き直しを行いたいと考えている線はチョークラインで引くと扱いやすいでしょう。
基本的な使用方法は墨壺と同じと考えて差し支えありません。
初心者でも使いやすいため、明確な目的がない場合はチョークラインを使うのがよいでしょう。
また、チョークラインの中でも糸の太さや巻きが自動か手動かなどさまざまな種類があります。
これからの墨出しや使用を検討している糸の太さなどから考え、適切なものを選ぶようにするのが大切です。
墨出し器はレーザーを照射し「基準線」を表示させる機械で、すべての墨出しの起点を担っています。
墨出し器を使う場合は水平な場所を確認したうえで、基準にしたい場所を選んでレーザーを照射するようにしましょう。
レーザーを照射できる墨出し器には、非常に多くの種類があります。
レーザーの色や数、屋外での使用耐性や電源のスタイルなど、それぞれの墨出し器に特色があります。
自分の役割と合っているものを正確に探し出し、使用するようにしましょう。
今回の記事では、墨出しに用いる用具の使用方法や選び方について解説を行いました。
ひとくちに「墨出し用具」といっても、実にさまざまな種類があり、それぞれで重視すべき要素は異なっています。
自分がどのような墨出しを行いたいのか、これから向かう現場にはどのようなスタイルの墨出しが適しているのかを客観的に考え、適切な用具を選択するようにしましょう。